第1回『おれの弟』

 私は池波正太郎の小説が大好きである。彼の父方の先祖が郷里の越中井波の出身であるからでもあるが、その小説の奥底に流れる人生観に共鳴するからである。その人生観が最もわかる小説が、昭和43年の鬼平犯科帳『谷中いろは茶屋』(文 … 続きを読む 第1回『おれの弟』